以前の記事で、上腕骨腫瘍の骨欠損に対するオーダーメイドプレートを設計しました。今度は、環軸椎亜脱臼の固定プレートを設計したいと思います。現在行われている手術は、腹側からアプローチして、4つのKワイヤーを打って、ワイヤを外科用セメントで固めて不動化をします。プレートを設計するとどんな形になるか実験してみました。狭い術野からこんな大きいプレートをうまく骨に這わせることができるか疑問ではありますが、とりあえず以下のようなプレートを作成してみました。
注意:この取組は思考実験であり、臨床利用はしていません。
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1.CTから3Dモデルを構築
まず、CTから環椎と軸椎の骨のモデルを取り出します。3DSlicerを使って、それぞれセグメンテーションを行い、別々のSTLファイルとして書き出しました。CTはうちの犬のデータですが、環軸椎亜脱臼はありません。正常な形をしているはずです。
3Dslicerの使い方は以下の記事
CT-MRI等のDICOMビューア3D Slicer(無料)の使い方 | 獣医 x プログラミング (jpn.org)
2.モデルをソリッドモデル化
それぞれのモデルをMeshMixerでソリッドモデル化します。MeshMixerでソリッド化の方法は以下の記事に書いています。
オーダーメイドプレートをCT3Dから作成 | 獣医 x プログラミング (jpn.org)
3.Fusion 360でプレートの設計
2つのSTLファイルをインポートします。メッシュタブからメッシュを挿入を押して、STLファイルを読み込んでください。以下のように、環堆と軸堆が作成されました。それぞれ別のモデルですからそれぞれ別に移動することができます。なお、以下は正常な形です。
左が環堆、右が軸椎です。
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頭側から尾側に見た様子です。手前が環堆です。軸堆の歯突起が環軸の中に入り込んでいます。それでもって、穴の下側にちゃんと収まっています。これでは見えませんが歯突起は、靭帯で環椎の内側に固定されています。
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環椎を移動・回転させて、環軸亜脱臼の状態にしてみます。軸椎の棘突起が、環軸から離れています。
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歯突起が浮いています。これで、内側の脊髄を圧迫してしまいます。
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環堆にもうちょっと前に行ってもらって、歯突起の構造を詳しく見てみます。すごい構造ですね。どうしてこういう形になったのでしょうか。複雑です。動物(人間を含め)は、どんな個体でも精巧で複雑な骨・関節を作っていると思うと感動してしまいます。
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上から見た図です。
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環軸を整復して元の位置に戻しましょう。プレートは骨が正しい位置になった状態で設計します。
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まず、環軸と軸椎をメッシュからBRepに変更します。このやり方も以前の記事(オーダーメイドプレートをCT3Dから作成 | 獣医 x プログラミング (jpn.org))に記載しています。
プレートでネジ穴を作る位置を、環堆の左右に出っ張っている翼と、軸椎の上に出っ張っている棘突起にしてみます。それぞれ、作業するための平面をつくる必要があります。構成タブから、3点を通過する面を選びます。そして、翼にある適当な3点を選択して面を作成します。すでに左側にはプレートができてしまっていますが気にしないでください。
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軸椎の棘突起にも面を作成します。
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面に立方体のスケッチをします。そしてプレートとなる立方体を作ります。その上にさらに、長方形のスケッチを描きます。以下のような姿になります。
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2つのプレートをつなぐブリッジをつなげるための長方形です。
同じ操作を、翼の上の平面にも実施して翼の上にプレートを作成します。プレートにスケッチしてブリッジをつなぐ長方形を書いてください。
現在、棘突起と翼の上にプレートが出来ています。それぞれのプレートには長方形のスケッチがあります。この長方形のスケッチを、ロフトという機能でつなぎます。
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これを左右で行って、プレートを2つ作ります。棘突起のプレートは、穴が左右で同じ場所に来ないように注意して穴あけを行ってください。